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佐久間マリのオリジナル小説ブログ 18才未満の方の閲覧はご遠慮ください

   
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エブリデイ キス!(2)
(2)

 いまだすやすやと気持ちよさそうに眠る神山さん。
 その顔は私の腰辺りに寄せて、まるで私は抱き枕のようにされている。ほんとかわいい顔してるなぁ。ひげもうすいし、高校生って言っても通りそう。
 お互いにカレカノなしって確認して、でもその話はそこで一旦終わった。それからは飲みながら食べながら主に今回の案件の話。仕事関係ナシでって言ったのに、自分が一番してるじゃん。
 そして、それから程よく酔いが回ってきたころにお店を出て、なんか無言だな、どうしたのかなって思ってたら「よかったらこの後、ウチにきませんか」って。いきなり。飲んでる間は、会話もオーダーも終始神山さんのリードで、五日であれやっぱり年上は年上だなとか思いなおしてたりしたのに、その時は何純情ボーイ気取ってんのって感じに顔をほんのり赤らめて。まあ、それはお酒のせいだと思うけど、表情が思いのほか真剣でどきっとした。私には敬語使うなとか散々言ってたくせに、ここでいきなり敬語とかズルくないですか。
 とかなんとか心の中で突っ込みながら、私も、はいって敬語で頷いたんだけど。
「……ん」
 その時、隣で身動ぎしたかと思うと、神山さんが目を覚ました。寝ぼけ眼で私を見上げる。
「ふあー、あ、起きてたの? 早いね。おはよ……」
「おはよう……」
 ゴザイマスと続きそうになったけど、それは飲み込んだ。だって、いろいろ今更だもんね。うだうだ考えてる場合じゃなかったかも。さすがに黙って帰ったりはしないけど、せめて服くらい着とけばよかった。
 すると、やっぱり引き摺られるように抱きしめられて、起こしていた上半身がずるずるとまた横になる。
「桃子」
 私の名前を呼んで、神山さんの唇がこめかみに押し当てられる。そうだった。昨夜でタメ口どころか、下の名前で呼び合うことになったんだった。もっとも一線も越えちゃってますし。私も、夜中何度もあなたの下の名前を呼びましたけれども。
「んっ、ちょっと、だめ……」
 宗久の手が私の体をまさぐって乳首をかすめるから声が出ちゃう。昨日はお酒が入ってたけど、すっかり酔いがさめた今、ちょっと恥ずかしい。
「……なんでダメなの?」
 うっ、なにその笑顔。いたずら仔猫ちゃんですか。
「だって……」
 その理由を答えようとしたけどあまりの気持ちよさに思わず目が閉じちゃって、それをオッケーのサインと受け取ったのか宗久は唇にキスしてきた。もちろん次の瞬間には舌が絡み合う。
 宗久のアパートはちょっと古かった。オートロックもないし、エレベーターもなし。そこの二階。 でも、けして広いとはいえないワンルームの部屋の中は、そのレトロさに味を出すように、いい感じに物が多くて雑然としていた。家具や小物のチョイスとかテイストがやっぱりデザイン系って感じで、センスが感じられる。そんなことも昨夜、一回目のエッチが終わって、宗久がシャワーを浴びている時に初めてゆっくり観察できたんだけど。
 私たちはお店を出て、タクシーに乗った。
 車内では互いに何も話さず、ずっと無言で、でもいつの間にかしっかり握られた手がこれからのことを予感させるには十分で、鼓動は早くなるし、すごく居心地も悪かった。
 部屋のドアを開けるや、待っていたようにキスをした。玄関の煌々としたダウンライトの真下で、靴も脱がずに。最初は手を繋いだままで触れるような確かめのキス。一旦離れて、今度は抱き寄せられて舌が入ってくる。再確認のキス。しばらく互いの口内を堪能していると、不自然にキスがやむ。どうして、もっとしてと請うように無言で視線を上げたその先には、完全にオスの色をした神山さんの目があった。そして、三回目のキスで、始まった。
 やや強引に手を引かれ、部屋の奥にあるベッドに連れて行かれる。何もしゃべらないけどどうかしたのかな。 押し倒されるのとジャケットを脱がされるのとどちらが先だっただろうか。その間もキスは続いた。私のインナーと神山さんがTシャツの首を抜く時に一瞬離れたくらい。
 キスに相性があるなら、彼とのそれはとてもいいと思う。
 味はもちろん、角度とか形とか、舌の絡ませ方とか吸う力とか、息継ぎの長さとか。それともただ、神山さんがキス上手だからなのかな。
――やっぱり、遊んでるんだろうな。
 ブラのホックに手がかかる。いつどんな時もこの瞬間は恥ずかしい。初めての相手ならなおさらだ。身体を小さくして、腕で隠すけど、やんわりと優しい手つきでこじ開けられた。胸が露になる。
 部屋の照明は、帰ってきたときにつけた廊下の向こうの玄関だけ。ベッドには、目隠しのために置かれているらしい少し大きめの観葉植物の葉越しにその漏れあかり。音は情欲に駆り立てられて急ぐ互いの息遣いだけ。
 とても官能的。
 その時だった。
「あ」
「……え?」
 蕩けかかった頭は動きが鈍くなってるし、目もとろんとしか開かないのに、神山さん発した声はいやに現実的で、甘い空気には全然似つかわしくない。何? シャワーとかかな? 確かに浴びたいけど、それで中断するのもイヤな気が。
「栗岡さん、ゴム持ってる?」
 え、今? 今、その話題? いや、モチロン大事なことですけどね! けどさ!
「俺、たしか……」
 そう言って、私に覆いかぶさったままでどこかに手を伸ばした。ゴソゴソしている。どうやらそこに隠し置いてるらしい。そして、まじかーとか言っている。
「一個しかない」
「……ひとつで十分……じゃないの?」
 仕事のときのような口調で言う神山さんとはうらはらに、私はまだエッチな気分だから、返事が甘ったるくなる。
「十分じゃなくね?」
 え、ちょっと。さっきまでのムーディーな空気は一体どこへ? まるでパッと明るい蛍光灯を点けられたみたいな感じ。さすがに私もだんだん冷めてきて、思わず出た声が素だった。
「一体、何回するつもりなの?」
 肘をついて上半身を起こしかけてた私を、ぎゅっと抱きこんでまた押し倒した。んー、とおどけたキスをしながら、
「いっぱいに決まってんじゃん」
 そして、今から買ってこようかなとか意味不明なことを言い出すから、反射的に「ダメ」と身体にしがみつけば、神山さんが驚いた顔をする。そして、にやりとして、
「なんで?」
「なんでって……だって……」
 早く続きをして欲しい。もう待てない、なんて。そんなはしたないこと初めてのエッチで言えるわけないじゃない!神山さんはそんな私の答えをわかっている風で何度も「なんで?」と聞いてくる。
「……意地悪」
 きゅっと睨むと、ははっ、と笑って「かわいい」と抱きしめられた。
 ええー!? なんなのこの人!


  
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