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佐久間マリのオリジナル小説ブログ 18才未満の方の閲覧はご遠慮ください

   
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エブリデイ キス!(11)
(11)

「じゃあ、近いうちにデザイナー君に会わせてね」
「うん。そのうちね」
 タモとは路線が違うので駅で別れる。
 宗久に、終わったら連絡ちょうだいと言われていたのでホームで電車を待ちながらメールする。そうしたら電話がかかってきた。
『おつかれ。女子会どうだった?』
『えっ、別に』
『何それ、別にって』 
『別には別にだよ』
 宗久は笑ってるけど、確かに怪しすぎる私の受け答え。やましいことなんてないんだよ、ホントに!
 女子会なんて基本的にどうでもいい話ばっかりで、男の人には特にくだらなく思えるような話しかしてないんだから。っていうか、正しくは聞かせられないような話だけど。
『桃子、次いつ会える?』
『え? 平日? 週末? 私はいつでも暇だよ。宗久でしょ、忙しいのは』
 なんかちょっと可愛くない返事になってしまったなと反省したのもつかの間、
『じゃあ、今から』
『えっ、今から!?』
 慌てて時間を確認すると十時半だ。まさか遅い時間の帰宅を心配して、また家まで送ってくれるとかそんなんじゃないよね。
『どこにいるの?』
 そう聞かれて、無意識に私は並んでいた列から抜けた。
『え、駅だけど……宗久、仕事は?』
『今日はもう終わった。じゃ、会社出るから、適当なところで待ってて』
 電車がホームに入って来て、スマホを手にしたまま突っ立っている私を、足早なサラリーマンがどんどん抜かしていく。我に返り、ドアが閉まろうとしている電車に飛び乗った。
 宗久が会社から来ることを考えて、乗り換えの駅で落ち合おうと連絡する。すぐに了解の返事がきた。
 朝ごはんのお皿をシンクに置きっぱなしにしたままだけど、部屋の中は全体的にきれいに保たれてるはず。洗濯物はお風呂に部屋干しだからひとまず見えないのでセーフだし。
 待ち合わせの駅売店の前に着いて、メールしようと思ったら宗久が来た。
「待った?」
「ちょうど同じくらいだった。ねえ、ホントに仕事大丈夫だったの?」
「うん、ヘーキ。それより今から桃子の家行ってもいい?」
「もちろんいいよ。てかそのつもり。ちょっと散らかってるけど。ごめんね」
「こちらこそ、突然でごめん」
「ううん。会えて嬉しいから」
 そう言うと宗久は微笑んで、私の手を引いて歩き出した。
 今からって言われたときはびっくりしたけど、会えて嬉しい気持ちの方がその何倍もある。
 ここから私鉄に乗り換えて二駅。お酒を飲んでるから顔が赤くなってるはず。電車の中は明るいからそれに晒されて、少し恥ずかしい。
「宗久、夜ご飯は?」
「食べたよ。コンビニだけど。桃子は何食べたの?」
「焼き鳥」
「オヤジくせーな。つか、女二人で?」
「女同士でも行くよ」
「っていうかいいなー、焼き鳥。俺も食いてー」
「すごく美味しいお店なの。今度一緒に行こうよ」
「うん」
「んふ……」
 部屋に入るなり、宗久は玄関の壁に私を押し付けてキスをして来る。
 もう。お客様を迎えるにあたってしなきゃならないことあるのに。テーブルの上のものを片付けたりとか。
「ちょっと……待って」
 息継ぎの隙を見て抵抗してみるけど、宗久は「無理」と言うが早いかまたキスを再開する。だからちょっと待って欲しいだけだって。せめて靴を脱がせてよ。
 スカートの裾から手を入れ、その場でタイツを下ろさんばかりになってきて、さすがに全力で宗久の身体を押し返す。
「ちょっと待ってってば!」
「えー、だって時間なくない?」
「泊まれば? もう十一時だよ?」
「泊まっていいの?」
「帰っちゃうほうがイヤ」
「嬉しい」
 宗久は時間に余裕ができたことで心にもゆとりが持てたのか、ちゅっと軽いキスをしてようやく私を解放してくれた。
「お邪魔します。きれいにしてんね」
「殺風景でしょ。宗久の部屋みたいに雑な感じにしたいけど私にはできない」
「それ、褒めてないよね」
 私はとりあえずコートを脱いで、散らかっているものを手早く片づけると、着替えるより先にやかんを火にかけた。帰り道、コンビニの前を通ったときにお酒を買うか尋ねたら、眠くなるといやだから今日は飲まないって返事だったから。
「私、宗久の部屋好きだよ」
「そうー? 古いし、きたねーよ」
「コーヒーいれるからちょっと待ってて。あ、インスタントだけど。ごめんね。コートかけとくね、えっと……」
 宗久は私がすすめた場所に腰を下ろして、狭い部屋を行ったり来たりして明らかに挙動不審な私を落ち着いた様子で見上げている。だって、男の人が家に来るなんていつぶりかわからないんだもん。
「そうだっ、テレビでも見るっ?」
 テーブルの上のリモコンに伸ばした手をそのまま引っ張られた。あぐらをかいたそこに私を引っ張り込んで、
「見ない。それよりエッチしたい」
「だって、コーヒー……」
「後でいい」
「だったら、先にシャワー……」
「一緒に入る?」
「えっ、やだ」
「ちぇー」
 いちいち否定するようなことを言いたいわけじゃないのに、この口はなんでこんなかわいくないことを言っちゃうのかな。
「……宗久、先にシャワーする?」
「ううん、ちょっと会社にメールしなきゃだからゆっくりどうぞ」
 お湯が沸いたので宗久にコーヒーを入れて、私は先にシャワーを浴びることにする。
 焼き鳥の炭火の臭いが気になってたからシャンプーしてすっきり。すっぴんも、もうすでに晒してるのでメイクを落とすのも怖くないし。ちょっと念入りに身体を洗って、ついでに歯磨きもしてバスルームを出る。いつもはTシャツにスウェットなんだけど、さすがにそれでは色気がなさすぎるので、旅行用のルームウエアを着る。シュガーピンクで端々にフリルがついていてかわいいんだけど、長袖クロップド丈だからセクシーなものでなくて申し訳ない。
 宗久はすごく薄いマックのパソコンを開いてパチパチ言わせていた。
「んじゃ、俺もシャワー借りるね。急いで入ってくるから」
 そう言ってすぐにパソコンを閉じて腰をあげる。バスタオルと新しい歯ブラシは脱衣所に準備済み。そういえば彼の着替えがないけど仕方ない。男物の服があったらそれはそれでおかしいし。
 宗久は本当にあっという間に出てきた。洗濯済みのパンツとTシャツに着替えてて、会社に泊まりこみが常の彼は簡単なお泊りセットなら常に携帯してるんだって。意外と几帳面なんだ。
「お待たせ」
 お風呂あがりにタオルで髪をがしがし拭く仕草って好きかも。宗久の髪は全体的に長めだから、ぼさぼさになってうっとうしく顔にかかる感じがまたいい。なんて見惚れていると、部屋で髪の毛を乾かしていた私の手からドライヤーを奪い取った。
「もう乾いてるよ」
「まだだよ……んっ」
 早速キス。もう、どれだけ待てないの。仕事のメールはもう終わったのかな。
 ベッドに押し倒されながら、お風呂の中でふと気になったことを聞いてみた。
「ねえ、もしかして疑ってる? 今日ホントは合コンだったとか思ってる?」
「思ってないけど、え、なに? 疑わなきゃいけなかったの?」
「ううん、ホントにタモと会っただけだから」
 その友達の友達とやらのことは言う必要ないよね。
 電気は消され、暗いけど宗久の顔はぼんやりと見える。今は早急な感じはなくて、私の髪を手櫛で梳きながら下になってる私の話をきいてくれる。
「友達、タモさんって言うの?」
「田森さん。高校が一緒だったの。今度、宗久に会いたいって」
「うん。いつでも」
 覆いかぶさってキスされると、宗久の髪がさらりと私にかかってシャンプーの香りがした。宗久はしばらく身体には触れず、たまに私の頬を撫でるくらいで純粋なキスだけを続けた。
 その甘いキスで私の思考を散々蕩けさせたところで、
「合コン……行って欲しくないけど、もし行くときは俺に言ってからにして、絶対」
 と言って、またゆっくり深いキスをくれる。
 合コンなんて行かない、もう絶対行きません。
――だって私には宗久がいるんだもん。
 そう思わせるには十分なキスだった。

  
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