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佐久間マリのオリジナル小説ブログ 18才未満の方の閲覧はご遠慮ください

   
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エブリデイ キス!(14)
(14)

 適当に時間を潰して指定されたお店に行くと、タモは既に待っていた。
 店内がすごく暗い、大人って感じのオシャレ系バー。タモにしてはちょっと珍しいチョイスだ。どちらかというと、二人のときは大衆的なお店を選ぶことが多い。
「タモ、ごめんね、急に」
「いいの。ちょうど今日友達と会う約束しててさ」
「えっ、もしかしてそっちキャンセルしてくれたとか?」
「ううん。あとから来るけどいい?」
 別に他に誰かが混ざるのが嫌なわけじゃないけどそれならそうと言ってくれればよかったのにと思う。同時に、タモとそういうところの価値観に違いを感じたことが今までなかったから、今日はどうしたのかなって思った。
「そうなの? 誰? 私が一緒でもいいの? 私は構わないけど」
 すると、いいのいいのとタモはいたく軽くあしらうから、また違和感を感じたのもつかの間、いたずらな笑みを浮かべる。テーブルの真上のダウンライトの光を受けて艶々としたグロスが輝く。ダークな空間だけに色っぽい。
「むしろ、運命感じちゃってるから」
「は?」
「ごめんね、騙したみたいになっちゃったけど、実は今日この前話してた人が来るの」
「それって、もしかして私の事いいとか言ってた人!?」
「そう。ほんとはね、桃子に彼氏ができたから彼を慰める会だったんだけど。まさかこんなことになるとはね」
 なんでも水曜日はその人の会社がノー残業デーだとかで、そういえば先週、流れた合コンも水曜日だったっけ。 
「え、どうしよう。やっぱり帰ろうかな」
「うそー! 待って、帰らないでよー! 佐野くんにもチャンスあげてよ!」
「チャンスとか……そんな……」
「デザイナー君に遊ばれたんでしょ!?」
 確かに宗久とはちょっと不穏だけど、だからってその佐野君とやらに会ってみたいとは本当に思わないんだもん。たとえその彼が総合的に宗久を上回るスペックだったとしても、はっきり言って今は全然興味ない。
 正直にそう言うと、
「そんなに他の男がどうでもいいんなら、それこそ一緒に飲むくらいねどうってことないじゃん! 桃子に下心があったらワルい女けどさ」
「でも、宗久が嫌がると思うし……」
「そこまで操立てしなきゃならないほどの関係じゃないじゃん! ねっ? お願い!」
「えー、でも一応まだつきあってるし。無理だよー」
「知らなかったことにしてさあ! 向こうが遊んでるんなら、桃子も遊べばいいんだよ!」
 タモの説得はもはや屁理屈で、ついには腕を掴まれんばかりの勢いの引き止めにあっていると、
「あっ、来た!」
 スーツ姿の男二人が案内されてこちらに歩いてくる。タモの友達と、そしてその友達の佐野君だろう。どっちが佐野くんなんだかわからないけど、遠目ですでに好青年オーラが。生唾飲み込んじゃったけど、下心じゃありませんから。
「もー! タモってばー!」
 声をひそめて抗議するも、タモは勝ち誇った顔で笑ってから「高野っち、こっちー!」と私の背後に向かって合図した。
「タモちゃん、お待たせ。あ、どうも。高野です」
「こんばんは、栗岡です」
「こいつは同僚の佐野」
「佐野です。はじめまして」
「はじめまして。今日は突然お邪魔してすみません」
 タモの話ではたしか一つか二つか年上だったかな。
 高野さんも佐野さんもすらっとスマートで、必要以上にサワヤカ君だった。スーツもシャツもネクタイも清潔感があって、センスもいい。二人とも十分感じいいんだけど、顔もいいのは佐野さんの方で、平均レベルよりも上。こんな人が私をいいって言ってくれてるとか信じられない。だって私、見た目も普通だし、スタイル抜群ってわけでもないし、顔なら断然タモの方がかわいい。なんで、私? フェイスブックで見たっていう写真が奇跡の一枚だったのかな。だったら今頃がっかりされてるかも。
「ノー残業って言ってもけっこう遅いんだね」
「まあなー。お客さんとかから電話は普通にあるしな」
 高野さんとタモの話に、私と佐野さんは適当に相槌を打つ。
 とりあえず注文した生ビールが来て、お疲れ様、と乾杯した。
「嫌いなものとかあります?」
「いえ、私は特にないです」
「私は甲殻類苦手」
 タモが言い、男性二人が適当にお料理を注文してくれる。と言っても独断じゃなくて、サラダはどれがいいですかって何種類かあるうちから私に選ばせてくれたり、こまやかな心遣いも忘れない。
 どの辺りに会社があるのかとか職種とかさりげなく聞かれて、佐野さんの会社の営業事務さんの話で場を盛り上げてくれる。
 高野さんとタモはなんとゴルフコンパで知り合ったらしい。私はゴルフしないけど、佐野さんはお付き合いで少しするんだって。ザ・サワヤカ! サンバイザーとかすごく似合いそう。宗久はどちらかというとニット帽とかキャップ系だな。
「栗岡さん、次何飲みます? はい、メニュー」
「あ、ありがとうございます」
「酒強いんですか」
「まあ、そこそこ……ですかね」
 実はザルです。けれどそんな自慢、ここでは必要ナシ。いや、別に誰に対しても自慢できるようなことでもないか。でも宗久もザルって言ってたな。どっちが強いか飲み比べしようって言ってたけど。
 私ははっとなって、意識を目の前に人に戻す。
「佐野さんはお強いんですか?」
「いや、僕はそんな強くないけど酒は好きっす。家でも毎日飲んでる」
「家ではビールですか」
「うん。だからか、最近ハラが出てきて」
「ええ、どこがですかぁ! すごくスマートで。なにかスポーツされてるんですか」
 会話はいつの間にか、佐野さんと私が二人だけで話す感じに。タモと高野さんは二人で盛り上がってるけど、おそらく意図的。
 でも、それが全然イヤじゃないくらい佐野さんはすごく話しやすかった。
 宗久に会う前なら願ってもない物件だった。いや、むしろ佐野さんの気持ちなんか関係なく、私は彼に好意を持ったと思う。好意を持たないわけがないくらい花丸な人だよ、この人。
 だけど、私の心の中は宗久のことばかりだった。比べるわけじゃなくて、宗久はこうだったなとか、宗久はこう言ってたな、宗久はこんな時計をしていたなって、何かにつけて想うのは宗久のこと。
 ばかみたい。そして、佐野さんごめんなさい。いや、別に佐野さんは私を好きってわけじゃないだろうから自惚れだけど。それでも、少なからず期待させてることは間違いない。期待を持たされちゃうと、その気がなくてもその気になるのが色恋沙汰でしょ。タモのせいだ。タモが悪い。
 途中、化粧室に立ったときに宗久にメールをしておいた。
『いろいろあって、タモと飲んでいたら男の子が来て、今一緒に飲んでいます。ごめんなさい。でも心配しないでね。終電では必ず帰ります』
 宗久にしたら、ごめんも心配しないでなんて言葉も片腹痛いかもしれないけど、一応。内緒にしないって約束したし。信じちゃってバカじゃねって笑われてたらイヤだな。返信は、返ってこなかったら辛すぎるから待たずにすぐに席に戻った。
 苦痛じゃないけど今の私にはどうでもいい話を、今度は四人でして、終電も近くなったのでお開きにする。
 予想通り、高野さんとタモは方向が一緒だとかで二人で地下鉄の駅に向かっていった。ホントに、タモ許すまじ。
 ここからなら私はJR。そしてこれも予想通り、佐野さんが送ってくれると言う。でもたぶん送り狼狙いというより、男のマナーとしてそう言ってくれるのだろう。聞けば、彼の家はうちと真逆だから、私はタクシーで帰ると言った。
「だから大丈夫です、ホントに」
「わかった。けどやっぱ心配だから、帰ったらラインして」
 佐野さんは納得してくれたけど、その代わり電話番号を聞かれてしまった。ま、いっか。そして、私たちはラインの『新しい友だち』になる。その時にようやくスマホを見て、宗久からのメッセージが届いてることに気づく。佐野さんの手前、その場で確認できなくて、気もそぞろで番号を交換し、「じゃ」と言わんばかりにそそくさとタクシーを止めて、乗り込む。たぶん私、別れ際すごく感じ悪かったはず。
 一人暮らしのOLに、家までタクシーはお財布的に痛いので、行き先は私鉄の駅まで。
 待ちかねていたメッセージを確認すると、
『帰るとき、連絡ちょうだい』って、私が送ったすぐ後に返信が来てた。やっぱりトイレで返事が来るのを待ってればよかったななんて今更思う。
『今から帰る』
『送ってもらう?』
 既読がついて、すぐに返事が来た。もしかして、怒ってる?
『ううん。一人で電車で帰ります』
 なんとなく敬語。
『駅で待ってる』
「えっ」
 思わず声が出ちゃった。
 どういうこと? 今どこにいるの? もしかして、今もう待ってるってこと? 仕事は? 怒ってるの? それとも別れ話?
 怖くて返信もできないけど、
『電車に乗ったらまたメールします』
 どんな結果でも、まずは会えるのが嬉しいって思っちゃう恋ってホント愚かだよね。

  

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